賃貸併用住宅で民泊を運営する場合どのようなリスクがあるのでしょうか。法的なリスクやトラブルなどについて見ていきましょう。
賃貸併用住宅で民泊を運営する場合、通常の賃貸とは異なる法的な制約を理解しておくことが重要です。これらを見落とすと、法的な罰則や運営停止命令を受けるリスクがあります。
日本国内で民泊を運営するには、旅館業法、特区民泊、または住宅宿泊事業法(民泊新法)のいずれかに基づく許認可や届出が必要です。特に「民泊新法」は比較的参入しやすいとされますが、年間営業日数上限が180日と定められています。賃貸併用住宅の一部を利用する場合、オーナーが同じ建物内に居住する「家主居住型」か、居住しない「家主不在型」かによっても、管理業務の委託義務などが異なります。これらの法規制を遵守せず運営すると、違法営業とみなされるリスクがあるのです。
民泊運営を行う部分は、建築基準法上「住宅」ではなく「寄宿舎」や「ホテル・旅館」といった特殊建築物として扱われる可能性があります。特に民泊として使用する床面積が100平方メートル(約30坪)を超える場合、建築物の「用途変更」の確認申請が必要となるケースが一般的です。賃貸併用住宅の設計段階から民泊を想定していない場合、この用途変更の基準を満たすための改修工事が必要になったり、そもそも用途変更が認められない地域であったりするリスクを考慮しなければなりません。
民泊は不特定多数の人が宿泊するため、消防法上、一般の住宅よりも厳しい安全基準が求められます。自動火災報知設備や誘導灯、消火器などの設置が義務付けられることが多く、賃貸併用住宅の既存設備では基準を満たさない可能性があります。消防署への届出や検査が必要となり、適合させるための追加工事費用が発生するリスクも認識しておく必要があります。
参照元:国土交通省|住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)[※PDF](https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/content/001387494.pdf)
賃貸併用住宅の建設や購入に住宅ローンを利用している場合、民泊運営が契約上の重大な問題を引き起こす可能性があります。
住宅ローンは、あくまでも契約者自身が居住することを前提とした低金利のローン商品です。賃貸併用住宅であっても、オーナーの居住部分が一定割合以上あることが条件となっています。民泊運営は「事業」とみなされるため、住宅ローンで購入した建物の一部であっても、金融機関によっては無断で民泊に利用すると契約違反(目的外利用)を問われるリスクがあります。最悪の場合、ローンの一括返済を求められる可能性もゼロではないのです。民泊運営を検討する場合は、必ず事前に金融機関へ相談し、許可を得るか、事業用ローンへの切り替えなどを検討する必要があります。
法的な問題をクリアしても、実際の民泊運営には特有の難しさやトラブルのリスクが伴います。
民泊の利用者は不特定多数の旅行者であり、生活習慣やマナーも様々です。夜間の騒音、ゴミ出しのルールの不徹底、共用部分でのマナー違反などが原因で、同じ建物や近隣の住民とトラブルに発展するリスクは常にあります。特に賃貸併用住宅では、オーナー自身も同じ建物に住んでいる場合、こうしたトラブル対応が直接的なストレスになる可能性もあります。
民泊運営は、季節や周辺イベント、観光需要の変動によって稼働率が大きく左右されます。安定した収益を見込んでいたにもかかわらず、閑散期が続いて赤字になるリスクもあります。また、清掃、リネンの交換、予約管理、ゲスト対応など、通常の賃貸経営にはない運営コストや手間(管理委託費用)がかかります。これらのコストを差し引いても十分な利益を確保できるか、慎重な収支計画が不可欠です。
賃貸併用住宅での民泊運営は、高い収益性を期待できる一方で、民泊新法、建築基準法、消防法といった法規制、住宅ローン契約の問題、そして近隣トラブルや収益変動といった多様なリスクを内包しています。もしも民泊運営を行う場合は、これらのリスクを事前に十分理解し専門家への相談や適切な対策を講じることが、安定した民泊運営を成功させる鍵となるでしょう。

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